夢乃時こと夢楽 楽夢楽見楽の現実逃避。

嫁補正が強い馬鹿が書くものです。 基本短篇話を不定期に更新します

 突然すぎるお知らせ 2

友紀の担任に急かされ家を開け向かった先は搬送された病院だった。
私は大慌てでスキマも使わず走って行ったので、妖怪の姿のままだったが、そこら辺はどうでも良かった。神綺さんが愛した娘だ。神綺さんの代わりに思う存分愛してやろう。そんな心が私にあったのだ。
受付を通り、指定された部屋へと向かう。
そしてドアを開け放つ。
「!?」
ナースが驚いた顔をして硬直しているのを他所に、私は友紀の名を呼び、手を握った。
「友紀!?大丈夫なの!?」
外にいる間にだけ髪を黒くした娘と、変え忘れ金髪のままの母親。
何処からどう見ても異様な風景であるが、その時の私はそれどころではなかった。
「あははっ…頭が痛い…ガンガン痛い…鉄パイプで殴られているみたいに痛い…」
「的確な例えはいらないから!と、とにかく思考停止しなさい!」
「えへ、えへへ…」
そう友紀はそうにへらと笑うと、目を閉じた。
あまりの痛さに気絶したのだろう。
そういえば、高校生になってから頭痛を訴える回数が極端に増えたような…
やはり、何か可笑しい。
眠りについた友紀の頬をなでながら、思案した。
「あ、あの…友紀さんのお母様?ですよね?」
…あっ
その時は初めてそれで気がついたのだ。
自分が金髪のままだということに。
「ふ、ふふっ、急ぎでしたからコスプレをしたまま来てしまいましたわ」
「お、お若いお母様で。」
はぁ、危ない危ない。
そう安堵していると、もう一人のナースが私に向かって手招きをしてきた。
「はい、何ですか?」
「医師から話があります。此方に来て下さい。」
ナースは私の前を歩き、先導した。
「医師、連れてきました。」
「ご苦労様です。では、八雲紫さん…ですね。」
「はい、そうですが」
「此処に運ばれてからすぐに検査をしました。その結果娘さんは今、重い病気にかかっている事が明らかになりました。」
『ユキちゃんは原因不明の病気にかかっているの』
「それは…」
思わず、息をのんだ。
「悪性脳腫瘍で、3年も持たないでしょう。」
言い渡されたのは、3年未満の余命宣告。
「もう腫瘍が広がり、手の付けようがありません。でも、薬でもう少しのばせられますが、どうしましょう。」
「本人に任せます。」
「そうですか。でも凄いですね、友紀さん。これだけ腫瘍があっても何の障害も持っていないのですから。」
『ユキちゃんがやめるから、紫ちゃん宜しくね。あ、あとユキちゃんが幸せに暮らしていけるように特別な魔法を掛けておいたから、安心してね。』
…脳腫瘍は、重度になるに従って障害を持つもの…
そう聞いて、神綺さんの言葉を思いだし…ただ…ただ唇を噛み締めた。
霊夢に『妖怪の賢者のくせに』と嘲笑われそうな格好で。